イソフラボンとの飲み合わせに注意したいワーファリンとは
大豆の胚芽に集中して含まれる成分のイソフラボンには、併用する場合に注意が必要な医薬品があります。
イソフラボンは大豆や大豆加工食品から摂取できるほか、サプリメントなどの健康食品としても製品化されており、安全性の高い成分として知られているものの、薬剤との飲み合わせには慎重になる必要があるのです。
この記事では、イソフラボンとの飲み合わせに注意が必要なワーファリンについてご紹介します。
ワーファリンとはどんな薬?
ワーファリンとは、血液を固まりにくくする医薬品であるワルファリンカリウムの商品名で、血栓症の治療に用いられる薬(抗血栓薬)です。
抗血栓薬は、血管内で血液が固まり、その循環を止めてしまう『血栓症』と、できた血栓が流れてその先の血管をふさぐ『塞栓』との血栓塞栓症の治療に処方されます。
血のかたまりである血栓の原因には、血小板と凝固因子との2つがあり、そのどちらの原因に作用するかで、抗血栓薬はさらに『抗血小板薬』と『抗凝固薬』とに分けられ、ワーファリンは後者に当たる薬剤です。
ワーファリンの効能について
ワーファリンは、エコノミークラス症候群のような血液循環の悪化で起こる静脈血栓症や心筋梗塞、肺塞栓症や脳塞栓症の治療や予防に処方されます。
特に心房細動という不整脈によって生じる心原性脳塞栓症や、心筋や腎臓・腸などの全身性塞栓症に高い予防効果を発揮します。
なお、静脈内に血栓ができやすい危険因子には、60歳以上の高齢、ガンや心不全・ネフローゼ症候群などの疾患、肥満や喫煙といったものが挙げられます。
そのほか、妊娠中および産後の一定期間や、更年期症状の治療や避妊目的でのエストロゲン製剤の使用なども原因の一つとされ、35歳以上または喫煙の習慣を持つ女性は特に発症リスクが高まるとされています。
ワーファリンとビタミンKとの関係性とは
ワーファリンは血液の凝固にかかわるビタミンKの働きを妨げ、それを必要とする血液凝固因子の働きを抑えて血液が固まるのを防ぐ作用があります。
そのメカニズムから『ビタミンK拮抗薬』と呼ばれ、血管内や心臓内での血栓ができるのを防いでいるのです。
ビタミンKは血液を固まらせて止血する働きのほか、骨を丈夫にしたり動脈の石灰化を防いだりなどの作用がある脂溶性のビタミンで、納豆や葉野菜に多く含まれています。
止血作用があるビタミンKが不足すると、ケガや内出血の際の血液凝固が長引いたり、鼻や胃腸から出血しやすくなったり、骨折や骨粗しょう症を招いたりする可能性があります。
18歳以上の成人では150mcg/日の摂取が基準とされていますが、ワーファリンを服用中にビタミンKを多量に摂取すると、その薬効を弱める場合があるので、飲み合わせに注意する必要があるのです。
ワーファリンの働きを阻害する食品とは
前述のように、ワーファリン服用中はビタミンKを多く含む食べ物の摂取を控える必要があります。
中でも注意が必要なのは、
・納豆
・青汁
・クロレラ
の3つが挙げられます。
納豆には、1パック(約40g)あたり240mcgほどと、多くのビタミンKが含まれているうえ、発酵の過程で欠かせない納豆菌が腸内でも72時間もビタミンKの合成をつづけるといいます。
そのため、納豆そのものに含まれる以上のビタミンKを摂取することになり、少量の摂取でも多量のビタミンKを摂ったことになるため、納豆の摂取は厳しく制限されているのです。
イソフラボンとワーファリンの併用について
イソフラボンには、分子に糖が結合しているグリコシド型イソフラボンと、糖が分離したアグリコン型イソフラボンとの2種類があります。
植物中では主に糖が結合した配糖体(グリコシド型)の形で存在しており、腸内細菌によって糖が分解されて吸収されるためアグリコン型と比べて約3倍もの時間がかかり、吸収率も低いのが特徴です。
ワーファリン服用中に摂取が制限されている納豆は、グリコシド型イソフラボンを含む発酵食品で、粘り気のもとである『ナットウキナーゼ』も含んでいます。
ナットウキナーゼには、血栓の主成分のフィブリンに働きかけて分解する働きや、体内の血栓を溶かす酵素の前駆体を活性化する働きなどの血栓溶解作用が備わっているため、血行をよくする効果が期待できます。
血液凝固を促すビタミンKを納豆から除去した製品も開発されており、ワーファリン服用中でもナットウキナーゼが有効に作用し、副作用はなく安全性も高いことが示唆されています。
なお、味噌などに含まれるアグリコン型イソフラボンの、ワーファリンに対する作用に関する報告は確認されていないのが現状です。
アグリコン型にも血行をよくする働きがあるため、抗血栓薬の服用中に摂取すると薬効を増強させる可能性があるため、サプリメントを利用する際には、あらかじめ医師に相談するのをおすすめします。