プエラリアとイソフラボンの違い
バストアップ効果が期待できるとしてサプリメントなどの原料になった『プエラリア』は、イソフラボンと同様にエストロゲン様作用を持つ植物です。
植物性エストロゲンという共通点を持つものの、両者には大きな違いがあり、特にプエラリアには健康被害が報告されているため、利用に際してその危険性を把握しておく必要があります。
この記事では、イソフラボンに似ているようで違うプエラリアについてご紹介します。
イソフラボンと似ているプエラリアとは?
プエラリア・ミリフィカ(学名Pueraria candollei var.mirifica、別名白ガウクルア White Kwao Krua)とは、タイの落葉広葉樹林に広く分布しているマメ科の植物で、根元は木の表面のようになり地中で肥大した塊根を形成します。
その丸い球根のように見える塊根に、強いエストロゲン様作用を持つ物質を含んでいるのが特徴です。
マメ科のクズ(葛;Pueraria lobata)と同属の植物であるものの、エストロゲン様作用の強い成分を含むことから、プエラリアはクズとはまったく別種と考えるのが妥当とされています。
また、原産国であるタイでは更年期の女性のための民間薬として用いられており、有効とする報告もあります。
サプリメントや化粧品などにも利用され、俗にバストアップや美肌効果、若返り効果、不妊や骨粗鬆症の改善などが期待できると謳われているものの、人体における有効性に関する十分な情報は見当たらないのが現状です。
プエラリアが含む成分とは?
プエラリア・ミリフィカの塊根には、プエラリア特有の成分である『デオキシミロエストロール』や『ミロエストロール』、『プエラリン』や『クワクリン』、大豆にも含まれるダイゼインなどのイソフラボン類といった成分が含まれています。
中でもデオキシミロエストロールやミロエストロールには、イソフラボン類よりも約 1,000~10,000 倍の強さを持つエストロゲン活性作用が明らかになっています。
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所の『健康食品』の安全性・有効性情報によると、「デオキシミロエストロールは生合成されない化合物だが、天然のエストロゲンとほぼ同程度の強いエストロゲン活性を持ち、ミロエストロールになると低下する」とされています。
さらにプエラリア・ミリフィカに含まれる成分は、産地や収穫時期・植物の年齢によって大きく異なり、成分を配合した製品でも含有量にかなりの差があるとの指摘もあります。
プエラリアに関する健康被害とは
近頃では原料にプエラリア・ミリフィカの塊根を配合した、バストアップなどを目的とする健康食品が販売され、2012(平成24)~2017(平成29)年までの5年間で209件の健康被害が報告されており、特に2015(平成27)年は97件と、前年の13件の7倍以上に増えています。
被害を受けたほぼ全員が女性で、購入方法も全員が通信販売を利用しています。
年代別に見ると、もっとも件数が多いのは全体の33%を占める20代の69件、次いで全体の20%に当たる40代の42件、わずかな差で30代の41件、もっとも少ないのは全体の18%となる10代の37件となっています。
具体的な有害事例には、腹痛や下痢・嘔吐といった消化器障害や、発疹やじんましんなどの皮膚障害が上位2つを占める中、生理不順や不正出血といった生理にまつわる健康被害が多く見受けられるのが特徴です。
また、乳房の痛みや膣からの出血、頭痛やイライラなどが認められたという報告もなされています。
イソフラボンとプエラリアとの違いについて
大豆の胚芽に集中して含まれる微量成分のイソフラボンは、エストロゲンに分子構造が似ているのでエストロゲン受容体に結合できる性質を持ちます。
そのため、エストロゲンが不足した場合にはその代わりとして働くエストロゲン様作用を発揮します。
さらに、天然のエストロゲンに比べて活性が1/1,000~1/10,000と穏やかなために、エストロゲン分泌が過剰になった場合に抑制する『抗エストロゲン様作用』も備えています。
このような特性を持つイソフラボンには、ホルモンバランスの乱れを整える効果も期待できるので、女性特有の不調や不快な症状を改善する働きが認められているのです。
一方のプエラリア・ミリフィカには、イソフラボン類より約1,000倍以上も強力なエストロゲン活性のある成分が複数含まれています。
サプリメントなど成分が凝縮された状態で摂取する場合、その安全性について信頼できる十分な情報が見当たらないうえ、強いエストロゲン様作用を示すことで人体への健康被害が指摘されています。
特に妊娠中や授乳中の女性、小児への影響が懸念されているためサプリメントの摂取は避けるべきであるとし、女性ホルモン関連の治療や医薬品の服薬を行っている人も、安易な利用を控えるのが推奨されているのです。